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トチ狂いましょう



僕が小学生の頃、近所の右翼の街宣車が「スーパージェッター」の曲を流しながら走っていた。
この「スーパージェッター」というテレビを知らない僕達は、この曲が軍歌だと思っていた。

今思うと素直に怖い。
『一人一殺』や『赤化共産党壊滅』といった物騒なスローガンを掲げた街宣車に、真っ黒な戦闘服を着た坊主頭の国粋主義者達がぎっしりと乗込んでは、この「スーパージェッター」の曲に合わせて出動して行くのだ、想像すると怖すぎる。

その曲は妙に明るいのに、街宣車に押し込められた坊主頭たちのその目は不気味に暗かった。
今にも噛みついてきそうな凶暴性と、女子供でも容赦しないといった残虐性を兼ね合わせた、貪よりと暗い目をしていた。

確かあの黒い街宣車は『りゅうせい号』と呼ばれていた。
糞ガキの僕達はりゅうせい号を見る度に、「天皇陛下のバーカ」と叫び、獰猛な国粋主義者たちをからかっていた。
天皇陛下の事をバカにすると国粋主義者たちがムキになって怒って来る事を僕達は知っていたのだ。
しかし国粋主義者たちはそんな僕たちを無言で無視していた。
全く相手にもしていなかった。

しかし、そんなある日、僕達が駄菓子屋の前で遊んでいると、僕達の背後に黒塗りの街宣車が静かに止まった。
有刺鉄線が張り巡らされた窓の隙間から眉毛を剃り落とした国粋主義者がヌッと顔を出した。
背後に止まった街宣車に気付かずガチャガチャを続けていた池本和樹君の頭に、眉毛を剃り落とした国粋主義者はドボドボドボっとコカコーラがぶっかけた。

驚いた池本和樹君がヒッ!と叫んで尻餅を付いた。
みんなが一斉に笑った。
池本和樹君のその時の顔があまりにも可笑しく、僕達は大きな声でケラケラと笑った。
そのうち街宣車に詰め込まれていた国粋主義者達も笑い出した。
駄菓子屋のおばばも笑い、盆栽を弄っていた爺さんも笑い、遂には池本和樹君も頭をネトネトさせながら笑い転げた。

りゅうせい号は颯爽と去って行った。
いったい彼らがこの国に何をしたいのか、ガキの頃の僕達には全くわからなかったが、僕達は手を振ってりゅうせい号を見送った。
天皇陛下死んじまえー!と叫びながら。

今思うと素直にトチ狂っていた。
糞ガキな僕達もりゅうせい号に乗った国粋主義者たちも、みんなみんなトチ狂っていた。
だから異常な時代はおもしろかった。

正常な現代はつまらない。
いや、正常なフリをしているだけで、内面は狂っている現代は更に怖い。
今の右翼もヤクザも愚連隊も正論ばかり吐き過ぎだ。
どうせトチ狂った人生なんだから、わざわざ無理して正常なフリをしなくても、トチ狂ったまま行けばいい。

気に入らないヤツはぶっ飛ばせ。
生意気なヤツにはコーラをぶっかけろ。

それがトチ狂ったアウトローの生きる道だよね。



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