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なでしこ

好きな番組だけを録画してソレ以外のテレビはほとんど見ない僕は、とにかく情報や流行というものに疎い。

だから、最近、ネットやテレビでよく話題になっている「なでしこジャパン」ってのが、いったい何なのか知らない。

彼女達がスポーツ選手だという事は何となく知っていた。
しかし、元々スポーツに興味のない僕は、それがサッカーだと知った時点で、それ以上彼女達の事なんか知りたくもないと思った。

だけど、この「なでしこ」ってのはそこらじゅうにウヨウヨと溢れており、必然的に僕の脳にも侵入して来る。

どこに行っても、何を見ても、なでしこ。
誰と会ってても、必ず「なでしこ」の話題がひとつは出やがる。

もう僕の頭の中には、ひたすら「なでしこ」しかなく、ウンコしてる時もセックスしてる時も、とにかく頭の中は「なでしこ」一色。

で、あの猿みたいな人の顔が、やたらと目に浮かんで来るのだ。

これは、はっきり言って辛い。

お猿さんのような女性の顔が、四六時中、頭から離れないというのは、まるでナチスの洗脳拷問のように辛い。

僕は、あのお猿さんみたいな顔をした女性の名前も知らない。
年齢も出身地も何も知らない。
彼女が、どれだけ凄い事をして日本中を熱狂の渦に巻き込んだかという事も全く知らない。

いや、知りたくもない。

だから、

速やかに僕の脳から退去していただきたい。

・・・・・・・・・・

このままではダメになると思い、脳に巣食う「なでしこ」を払い除けようとテレビを付けた。
つまらねぇテレビは余計脳を痛めつけると思い、ハードディスクに保存してある秘蔵VTRを再生する。

3年B組金八先生第2シリーズ「卒業式前の暴力」。

そう、加藤優が荒谷二中の校長を放送室に監禁するアレだ。

僕は、辛い事や悲しい事、嬉しい事や楽しい事があった時は必ず「3年B組金八先生第2シリーズ」を見るようにしている(結局、いつも見ている)。

今まで何回見たかわからない。
もうセリフもタイミングも完璧に知り尽くしている。

そんな「3年B組金八先生第2シリーズ」に、「なでしこ」で混乱する僕は逃げ込んだ。
加藤優よ助けてくれよ、金八っつぁんよ助けてくれよ、と情けなく囁きながら、リモコンを握る僕はオープニングテーマをスキップさせた。

画面では、放送室に立て籠った加藤、松浦、を金八っつぁんが必死に説得していた。

金八2

この「卒業式前の暴力」では、護送車へ連行されるシーンと並んで最高のシーンだ。

そんな金八っつぁんが「かとーっ!」と叫んだ瞬間、その感動と共に僕の脳内で何やら「バチっ!」と乾いた音が鳴った。
それは、「ファイトイッパーツ!」でお馴染みのリポビタンDのCMで、崖にぶら下がる必死なケインコスギの綱が、不意に「バチっ!」と千切れてしまったような、そんな不吉な「バチっ!」であった。

なんだ今のは?・・・と、首をコキコキさせながら頭を振り、その不吉感を仕切り直し、さぁ、改めて金八っつぁんの愛にどっぷりと浸るかとテレビに目を向けた瞬間、僕は一瞬にして驚愕した。

金八1

出たよお猿さん!

僕は慌てて目を瞑ると、手探りでリモコンを探し出してはこの名作を惜し気も無く停止させた。

このままでは本当に気が狂ってしまう。

そう思いながら慌ててマンションを飛び出した。

マンションの前の通りを十分ほど走れば、そこは僕のオアシス歌舞伎町だ。
この乱雑混雑卑猥奇怪な人混みの中に紛れ込んでしまえばこっちのもんだった。
そのまま人混みに流されながら、いつしか僕は、冬の流木のように馴染みのキャバクラへと辿り着いたのだった。

その店は、相も変わらずチンドン屋のような雰囲気を醸し出していた。
どーしてここまで悪趣味なんだ、と頭を抱えてしまいそうな赤絨毯を踏みしめながら、やたらとオールバックな店員に連れられいつもの3番テーブルへ連行される僕。

「あらっ、いらっしゃーい!」

白痴的な美しさを持つキャバ嬢達が、3番テーブルへ向かう僕に向かって馴れ馴れしい笑みを投げ掛ける。
そんな彼女達に、僕は照れ隠しのしかめっ面を向けながらニヤリと微笑み、(やっぱりキャバだよな)、と、つい先程まで金八なんぞに助けを求めていた自分を密かに戒めた。

と、その時、目的地である3番テーブルの手前にある2番テーブルに、客待ちのキャバ嬢が数人待機しているのが見えた。
僕は歩きながらもソッと2番テーブルに視線を向け、さてさて今夜はどの娘を指名しようかな・・・などと、中年の卑しき下心を曝け出した。

と、その時、再び僕の脳内で「バチっ!」と鳴った。
今度のソレは、先程よりも鮮明で、まるでスタンガンを放電した時のような刺激的な破裂音だった。

なんだなんだ、と慌てた僕は、2番テーブルに目を凝らした。

キャバ1

また出たお猿さん!

僕はすかさずオールバックな店員を呼び止めると、「あいつは誰だ!」と、油でネットリと輝く右後頭部に叫んだ。
「えっ?」と慌てて振り返るやたらとオールバックな店員。
2番テーブルに座っていた娘達も、一斉に「えっ?」と首を傾げた。

「えっ?じゃねぇポン引き野郎!あいつだよあいつ、あの猿はいったいなんだって聞いてんだよ!」

と、僕が2番テーブルを指差しながら猟奇的にそう叫ぶと、いつの間にか例のお猿さんは消えていたのだった。

もう無理だ、これでは本当にアッチの世界に逝っちまう!

そう危機を感じた僕は、「やっぱり帰る」とオールバックに告げると、そのままスタスタと足を速めながら店を飛び出したのだった。


歌舞伎町のネオンは、相変わらず狂ったように輝きながら、心淋しい人々の精神を悪戯に煽り立てていた。
そんなネオンに照らされながら町を彷徨う僕は、不意に内山田洋とクール・ファイブの「東京砂漠」を、少し前川清のモノマネを入れながら口ずさんだ。

いったい僕はどうなってしまうんだ・・・・

執拗なマスメディアに洗脳された男の成れの果てが、今日一日で何百万人もの人々が踏みしめた新宿の薄汚ねぇアスファルトを踏みしめながら宛も無く彷徨う。

そろそろ、変態ブログの例の小説を仕上げてしまわなければならないのに・・・

そう焦りながらも、ふと気が付くと、いつの間にか「思いで横丁」の雑踏の中にポツンと立ちすくんでいた。
目の前には「つるかめ食堂」のサッシ戸が、寒々とした蛍光灯の灯りを輝かせ、店の前の狭い通りには焼き魚の焦げた香りがモワモワと漂っては、ふいに田舎の夕暮れ時を連想させた。

嗚呼,さんま定食が食いたい・・・

大衆的な脂臭が漂う都会の路地裏に立ちすくみながら、僕の心は急激にソレを求めた。

操られるかのように「つるかめ食堂」の入口へと向かった。
夢遊病者のようにゆっくりと歩き出した僕の脳内で、今までにない激しい「バチっ!」が響いた。
それはまさに脳の血管が引き千切れたかのような、そんな不気味な音だった。

不吉な予感を感じた僕は、一瞬、「つるかめ食堂」のサッシ戸の前で足を止めた。
そして、心の中でポツリと呟いた。

どうせ・・・またお猿さんなんでしょ・・・

大衆食堂





とにかく、「なでしこ」さんとやらは、速やかに僕の脳内から退去して頂きたい。
僕はこう見えてもそれなりに忙しい身なのだ。
だから貴女にかまっている暇はないんです。

・・・とか言いながら、僕は今、結構、いや、かなりこのお猿さんが好きになりかけてます・・・




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